内浜ジャーナル
名古屋市瑞穂区内浜町にある「すずき内科クリニック」の鈴木馨医師のブログです。病気の説明や私の趣味などを語っていきたいと思います。
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> アーカイブ - 2015年07月
私本太平記 吉川英治
歴史小説を読む楽しみを存分に味わえる作品です。
歴史小説は実在した人物、出来事を踏まえた上で登場人物を生き生きと描写しなければなりません。文章力、古典にも精通した語彙力、歴史知識、歴史に対する見識など相当な学力、教養を必要とします。たとえば本書の中でも足利尊氏が亡くなった時「薨去」という言葉を用いています。薨去は皇族だけでは?と思って調べてみると三位以上の地位がある人の死去についても使うのでした。
学校で習う現代国語の授業で題材とされるのは、ほとんどがいわゆる「純文学」や私小説で、作家の頭脳の内面を描写したような作品です。これでは物語を読む楽しみを知ったり、歴史を学んで現在に役立てるような思考は育たないでしょう。逆に「純文学」を上位に考え歴史小説を「大衆小説」として下位に考える愚かさを招いています。
歴史小説はほとんどが長編小説なので教科書には馴染まないのかも知れませんが、一節だけでも良いので中高生から読むべきものと思います。
昭和38年に書かれた吉川英治の私本太平記は現在の視点で見ても魅力ある作品であり、取り上げられることの少ない南北朝時代(室町時代)について勉強するうえでも大変役に立つ本です。本書は室町幕府を開府した足利尊氏を主人公として鎌倉幕府末期の政治の荒廃から幕府滅亡、建武の新政とその失敗、南北朝に分かれての内乱の連続が描かれています。その間にも吉田兼好や観阿弥のエピソードがからんで時代性を良く描写しています。教科書に載っていた徒然草はもともと誰かに読まれるために書いた訳でなくふすまの継ぎに使われていたメモ書きのようなものだったなど興味深いエピソードが書かれています。
南北朝時代があまり小説などで取り上げられないのは南北朝正閏問題という現代まで続いている議論があるからでしょう。徳川光圀の大日本史以来後醍醐天皇の南朝こそが正統であるという意見が通っていて明治末の国会でも激しい議論がされて南朝が正統とされています。そのため皇居の前にも後醍醐天皇に忠誠を貫いた楠木正成の銅像があります。不思議なことに現在の皇室は北朝の後裔なのに。
吉川英治は南北朝問題についてはあまり重要な問題ではない、もともとは兄弟間の継承の問題で血統の問題ではないとあっさりと説明しています。さすが吉川英治は歴史への見識がしっかりしています。
現代人にとってお勧めの書です。もっと歴史小説を読みましょう。
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[ 2015/07/08 17:09 ]
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