内浜ジャーナル
名古屋市瑞穂区内浜町にある「すずき内科クリニック」の鈴木馨医師のブログです。病気の説明や私の趣味などを語っていきたいと思います。
HOME
|
MAIL
|
ARCHIVES
|
RSS
|
EDIT
|
ホーム
> アーカイブ - 2021年03月
PCR (polymerase chain reaction)
(日本RNA学会から引用)
新型コロナ騒動が始まって、初めてPCRという言葉を耳にされた方も多いかと思います。私は1991年から数年の間、名古屋市立大学で研究生活に携わっていました。研究の中心はPCRを扱うものでした。PCRはアメリカのカリー・マリス博士が1983年に初めて成功させた技術です。遺伝子の一部を大量に複製させる方法で、遺伝子の構造を分析するのに大いに貢献しました。
1989年には、それまでは非A非B肝炎と呼ばれ未知のウイルスだったC型肝炎の塩基配列がPCRを応用した技術でつきとめられ発表されました。C型肝炎は長年日本人の肝硬変、肝癌の原因の8割を占めていたので画期的な発見だったのです。それまでのウイルス研究は電子顕微鏡で病原ウイルスを発見することが中心だったので、遺伝子からウイルスを見いだすという手法は初めてだったのです。
その一種お祭り騒ぎの中、私も研究生活に突入したのです。
大学の上司であった溝上雅史先生(現在国立国際医療研究センター、ゲノム医科学プロジェクト長)の指揮のもとPCRとDNAシークエンシングに取り組んでいきました。臨床系の実験室でも遺伝子工学を扱い始めた端緒で、はじめは失敗の連続でしたが、遠くの大学の研究室に出向いて教えてもらったりしてマスターしました。
研究材料は患者さんからいただいて冷凍保存されていた血清です。ウイルスは遺伝子とタンパク質からできています。はじめの行程は血清とウイルスから余分なタンパク質を除去して裸の遺伝子(RNA)にすることです。一見単純に見えるこの過程でずいぶん失敗していましたが東京医科歯科大学へ行って先生の手技をじっと見て改善点が見つかりました。RNAを分離したら、酵素を使ってDNAに変換します。PCRはDNAを増幅する方法なのでRNAはDNAに変換する必要があるのです。すでに発表されている目標の遺伝子を検討して20塩基前後のDNAでできた2つのプライマーを合成します。2つのプライマーで挟まれた部分の塩基配列をPCR法で増幅するのです。目的の遺伝子をプライマーと材料となる核酸塩基と耐熱性ポリメラーゼと混合して専用の機械で加熱と冷却を40回ほど繰り返して増幅します。できあがったものを電気泳動にかけて予想通りの長さの配列のDNAが見られたら陽性となります。このDNAの断片を文字通りカミソリの刃で切り出し分析にかけ塩基配列を決定し、研究に用います。塩基配列の決定はPCR以上に複雑なものですので割愛します。
以上の説明は実際に実験をやったものでなければ具体的に想像できにくいのではないでしょうか。テレビで毎日毎日PCRと連呼していますが原理や問題点についての解説はほとんど聞かれないように思います。
C型肝炎もインフルエンザもコロナウイルスもRNAウイルスです。
RNAウイルスはDNAウイルスと違って遺伝子の修復ができないため非常に変異が速く起きます。変異の速さはウイルスの部分によって異なり、人間の免疫のターゲットとなる部分は特に変異が速いためヒトがいくら抗体を作ってもすり抜けて感染を持続させてしまいます。そのため、C型肝炎のワクチンは成功していません。
溝上グループもこの変異が速い部分(エンベロープ)の研究をおこないました。溝上先生は20年以上にさかのぼって血清を保存していたので昔の血清と現在の血清のC型肝炎ウイルスを分析比較して変異のスピードを計算しました。また、世界中の患者さんの血清をもらってきてC型肝炎が世界にどのように広まったかも研究しました。これらの分析手法(分子進化学)は三島にある国立遺伝学研究所に行って学んで来ました。世界中の血清はロンドンにあるKing’s College病院の肝臓病センターに行って実験をしてきました。
***
新型コロナでは初めから診断のためにPCRが臨床検査として導入されました。
ここで疑問がわいてきます。
昔に比べれば機器の改善はあるでしょうが、上記のように説明した手順は基本的には同じのはずです。原理も同じのはずです。費用もけっこうかかります。
コロナウイルスは以前から風邪ウイルスの代表です。風邪症状の3,4割はコロナウイルス感染でした。ありふれたウイルスです。ありふれているので医療の場所でわざわざコロナウイルスの検査なんてしていませんでした。ましてや手間のかかるPCRなんて考えてもいませんでした。風邪症状でも疑われる場合に限りインフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルスは検査をしていますが、ウイルスの蛋白を検出する抗原検査です。
「新型コロナ」というからには、旧型コロナと違う特徴的な部分があるのでしょう。一応、初めて武漢で検出されたウイルスを初めとして新型コロナの塩基配列は多く報告されています。なにより、PCRに使うプライマーをどのように決定して検査をしているのかが気になります。変異が多い部分に設定すれば変異の進行とともに検査に引っかからなくなってしまうので安定した部分でプライマーを設定するはずです。最初の武漢の論文、ドイツの論文をもとにプライマーを決定しているようですが、「新型」に特徴的な部分を検出できているのかどうか、「旧型」も検出してしまわないのか、明瞭に説明した文献に出会っていません。
もし「旧型」もPCRで検出してしまっているのなら、従来からある風邪の検出をしていることになり、今の大騒ぎ、経済的打撃は無意味(あるいは犯罪)ということになります。
スポンサーサイト
[ 2021/03/31 11:59 ]
未分類
|
TB(0)
| コメント(-)
|
ホーム
|
次ページ
≫
Page Top↑
プロフィール
Author:すずき内科クリニック
名古屋市瑞穂区のすずき内科クリニックの鈴木馨です。
すずき内科クリニック
もご覧ください
最新記事
WHO、国際連合(UN) (09/06)
マウイ島火事の謎 (08/29)
日本は独立国ではない? (08/04)
金子みすゞ (05/11)
ワクチンに発癌遺伝子が入っている (04/21)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
2023/09 (1)
2023/08 (2)
2023/05 (1)
2023/04 (2)
2023/02 (2)
2022/11 (1)
2022/10 (1)
2022/09 (1)
2022/08 (1)
2022/06 (1)
2022/05 (1)
2022/04 (2)
2022/03 (2)
2022/02 (2)
2022/01 (2)
2021/12 (4)
2021/11 (2)
2021/10 (1)
2021/09 (1)
2021/08 (2)
2021/07 (2)
2021/06 (1)
2021/05 (1)
2021/04 (1)
2021/03 (2)
2020/10 (2)
2019/07 (1)
2019/05 (1)
2019/03 (1)
2018/07 (1)
2018/05 (1)
2017/12 (1)
2017/10 (1)
2017/08 (2)
2017/06 (1)
2017/02 (3)
2016/12 (1)
2016/11 (1)
2016/10 (1)
2016/09 (1)
2016/06 (2)
2016/05 (1)
2016/03 (1)
2016/02 (1)
2016/01 (3)
2015/11 (2)
2015/09 (3)
2015/08 (1)
2015/07 (1)
2015/06 (1)
2015/04 (2)
2015/03 (1)
2015/01 (1)
2014/12 (2)
2014/11 (2)
2014/10 (2)
2014/07 (1)
2014/06 (1)
2014/03 (1)
2014/02 (2)
2014/01 (2)
2013/11 (1)
2013/09 (1)
2013/06 (1)
2013/05 (3)
2013/04 (1)
2013/03 (1)
2013/02 (2)
2013/01 (1)
2012/11 (1)
2012/10 (1)
2012/09 (1)
2012/08 (2)
2012/06 (1)
2012/04 (2)
2012/03 (1)
2012/01 (1)
2011/12 (1)
2011/11 (1)
2011/10 (3)
2011/09 (1)
2011/08 (2)
2011/06 (2)
2011/05 (1)
2011/04 (1)
2011/03 (1)
2011/02 (1)
2011/01 (2)
2010/12 (1)
2010/11 (2)
2010/10 (2)
2010/09 (3)
2010/08 (2)
2010/07 (7)
カテゴリ
未分類 (59)
ごあいさつ (0)
読書 (14)
お知らせ (1)
歴史 (4)
医学 (51)
その他 (16)
検索フォーム
RSSリンクの表示
最近記事のRSS
最新コメントのRSS
最新トラックバックのRSS
リンク
管理画面
このブログをリンクに追加する
ブロとも申請フォーム
この人とブロともになる
QRコード